6:何でもしますから!
草の根カフェに訪問してから二日後、ブロさんはもう一度草の根カフェを訪れた。しかし今度はお客さんとしてではなく面接をしに来たのだ。
わかさぎ姫「一応私がこのカフェを提案した、いうなら店長のわかさぎ姫よ。よろしくね」
赤蛮奇「副店長をやっている赤蛮奇だ、宜しく」
ブロさん「オッスお願いします~!」
影狼「さて早速だけど、姫様。バンきっちゃん!ブロさんがここでアルバイトをしたいって話なんだけどどうかな?実際人手が足りていないのも事実だしこの機会に雇ってもいいと思うのよ、人間のお客さんも増えるかもしれないし」
わかさぎ姫「そうなんだけどね~、でも私は一つ懸念していることがあるのよ。ブロさんって料理とかできる?あと食材と確保するのに森に行かないといけないし妖怪と戦える力が必要になるわよ?力仕事だってあるし・・失礼かもしれないけどあまり強そうには見えないのよね」
ブロさん「う~ん・・んにゃっぴ・・やっぱぁ・・修行するしかないですよね」
赤蛮奇「まあでも、博麗神社に居候しているってことは霊夢が常時一緒にいってことでしょう?だったら最初のうちは店内のことやらせておいて修行の成果が出たら外の方に連れ出すというのもいいんじゃないのかな?私は雇うの賛成だけど?」
心配するわかさぎ姫とは裏腹に赤蛮奇は軽いノリで言った、軽く店内を見直すと実際の客の入りと従業員の数が比例していない様子だった。客が何十人も入れ替わるのに対して店内の従業員はたった3人しかいなかった、店内はいつも店員たちの焦りで騒がしかった
影狼「まあ姫様の気持ちも分からなくはないけどいいんじゃないですか?ブロさんだってお金のために働きたいってことだしそれ相応の仕事はしてくれると思いますよ?うちは完全歩合制だから仕事してくれればしてくれるほどあげるし逆なら全く給料出ないっていう仕様だからね、どれだけ稼ぎたいのかは知らないけどそれなりに欲しいならそれなりに頑張ってもらうよ?」
ブロさん「全然できます!うん!ブラック企業に働いていたから余裕っすよ!お願いします雇ってください何でもしますから!」
わかさぎ姫「・・よし!そしたら一時研修期間ということも兼ねて一ヵ月間様子見ようか、あまり価値がないと判断したら速攻クビになっちゃうからね?」
ブロさん「かしこまり!雇ってくれてありがとナス!」
赤蛮奇「フフッ、まあこれだけ軽いノリだったら意外とやれるかもね?カフェは愛嬌だから・・じゃあさっそく研修に入ろうか?といっても最初のうちは接客とかだけだからそんな難しくないよ、私が教えるからよろしくね」
ブロさん「ウッス!お願いします~!」
こうしてブロさんは草の根カフェでアルバイトをすることになった、一日目の研修は簡単な接客とコーヒーの淹れ方を教わり外の世界で働いていた時とそこまで変わらない一日を送った。
ブロさん「ぬわぁぁ~ん疲れたもおお~ん!きつかったすね今日はぁ~!」
影狼「大体今日ぐらいの人数が平日の忙しさ、休日はもっと忙しいからこれでへばっちゃだめだよ?」
ブロさん「かしこまりぃ!」
わかさぎ姫「とりあえず今日は上がっていいよ、お疲れ様。戸棚にあるコーヒーの種持って行っていいよ。霊夢さんと一緒に飲んで」
ブロさん「賄いっすか~!ありがとナス!頂きます!」
赤蛮奇「もう夜遅いから帰るのには気を付けるんだよ~!またよろしくね!」
ブロさん「ウッス!お願いします!」
そういうとブロさんは店を後にした
ブロさん「異世界とは言っても働く大変さは変わらないなぁ・・まあでも力がないわけだしこれぐらいの方が俺には似合っているかも、でも霊夢に強くなれるように教わんないとなぁ~、こうやって帰る時も妖怪に襲われる可能性があるわけだし・・あっ」
ふと上を見た、空は満天の星空で雲一つなかった、星々の一つ一つがくっきり見えるぐらい空は澄んでいた
ブロさん「・・こうやってゆっくり見ると・・やっぱり異世界なんだなぁ~って思うなぁ・・こんな星空南極でも見れないだろうなぁ・・幻想郷の空気が澄んでいる証拠なんmだろうなぁ」
霊夢「上ばっかり向いていると危ないわよ」
ブロさん「ひゅいい!?・・れ・・霊夢!?」
突然声がする方を見たら霊夢がいた
ブロさん「どうしてここに?」
霊夢「仕事初日、いきなり妖怪に喰われて死亡なんてなったら大変じゃない!せっかくの稼ぎ頭ができたんだから!死ぬならもっともっと家に家賃いれてから死んでもらわないと!100万円ぐらい入れてよ!」
ブロさん「無理無理!そんなお金貰えないです」
霊夢「まあ長い間居候してくれればいいわ、フフ。さ~て・・今日の夕飯は何にしようかなぁ~!」
ブロさん「いいねぇ~!今日の夕飯はなにか~・・ん?」
月光によって霊夢の顔がうつった、涙の跡が霊夢の顔に合った。見間違えと思って触れなかったが確かに霊夢の顔には涙跡があった。
ブロさん(・・?泣いていたのかな・・霊夢・・何かあったのかなぁ・・)
霊夢「ん?どうしたの?」
ブロさん「ううん何でもない、さっ!帰ろう!」
深くは言及しなかった、言及したところで何かが変わるとは思わなかったからだ、仮に聞いたところで霊夢が話してくれるとも思わなかった。ブロさんは何も聞かずに今日の仕事の事を話しながら神社に帰った
次の日
ブロさん「霊夢、お願いがあるんだなぁ~!」
霊夢「なによなれなれしいわね、なんなの?」
ブロさん「いやさ、影狼たちに言われたんだけど、霊夢に修行を付けてもらえって」
霊夢「私に?なんで」
ブロさん「出勤する道にも妖怪がいるし食材良達の際にも妖怪と関わることがあるから自分の身は自分で守れるようにだって、だから教えてくれよ~!」
霊夢「めんどくさいわねぇ・・まあでも稼ぎ頭が消えるよりはましか・・表出なさい、鍛えてあげるわ」
ブロさん「よしきた!いくで!」
二人は神社の外に出た、今日も幻想郷は晴れ晴れしたいい天気だった。しかし博麗神社では圧倒的雷雨が予想された
霊夢「まず!あんたは基礎の基礎自体ができていないわ、言うならば何もできていない!戦いもできなければ相手がどんな攻撃をするかもわかっていない!完全に戦いに関しては無能を極めているわ!」
ブロさん「ああん!ひどうぃ!」
霊夢「てなことだからまずは組み手をやるわよ、怪我しない程度に反撃はするからそのつもりで攻撃してくるように!」
ブロさん「いいのか?一応男なんだぜ?ケガするかもしれないぞ?」
霊夢「あんたの拳は一つも当たらないわ、だから怪我の心配なんて全くないわ」
ブロさん「・・いよっし!久々に昔を思い出して頑張ってみるか!いくぞ霊夢ぅぅ!」
ブロさんは霊夢にめがけてパンチを繰り出した、しかし霊夢はそれを難なくかわしブロさんの腹に膝蹴り一発
ブロさん「ファ!?」
ブロさんがひるんだすきを霊夢は見逃さなかった、そのまま続けて顔面に平手打ち、ブロさんの体が180度回転したところにサマーソルトをぶち込み最後はとどめと言わんばかりに宙に浮いた体を地面にたたきつけた
ブロさん「アアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
霊夢「フン、こんなところかしら・・で?何か学べた?」
ブロさん「痛い痛い痛い!体のあっちこっちが痛いいんだよぉ!あ~もう・・ねえ本当に・・手加減するって・・」
霊夢「手加減しなかったあんた今頃首の骨ぶち折れていたわよ、つーかこれぐらいで痛いとか・・・戦い舐めるんじゃないわよ!」
霊夢の怒号が響き渡りブロさんはシュンとしてしまった、常識に考えて当たり前なのだ。何年も格上の敵を倒してきた霊夢と何もせずにのうのうと過ごしていたブロさんとでは天と地ほどの差があった、この差を埋めるのはとても容易ではない
霊夢「まあただこれで分かったでしょ?基礎の基礎ができていないんだからその基礎の基礎を学んでいくしかないの、教えてあげるからさあたって!」
ブロさん「ちょっと・・い・・痛いから待って・・」
霊夢「だらしないわねぇ~!あんたそれでも男なのお!?」
アリス「え?何しているの霊夢・・」
神社の境内から一人の美少女が姿を現した、その姿はまるで人形のように可憐で美しかった
霊夢「ああアリス、修行をしているの、この人が修行を付けてほしいと言っていたから」
アリス「しゅ・・修行?まあスパルタ教育ってやつなのね・・でも彼もうボロボロで何もできないじゃない、怪我しているし・・立てる?手当してあげるわ」
ブロさん「え!?・・オタクに優しい美女は存在したんだ!」
そういうとブロさんは一度縁側に行き手当をしてもらった
ブロさん「イタタ・・!もうちょっと優しくお願いします・・」
アリス「と言われてもねぇ、男なんだからこれぐらい我慢して、えい」
ブロさん「イッターーーーーー!」
霊夢「アリス、あまり甘やかしちゃいけないわよ、彼には強くなってもらわないといけないんだから」
アリス「へぇ、強くなってもらいたいんだ、大体どれぐらいの強さにはなってもらいたいの?」
霊夢「そうねぇ・・妖怪獣道の妖怪レベルまでは倒してもらえるようになってほしいわね」
アリス「妖怪獣道って・・その気になれば子供でも倒せる妖怪がいるのに?ブロさん貴方・・弱いのね」
ブロさん「何も言い返せないです・・・」
アリス「よく見ると腕も細いし・・身長も男性にしてはあまり大きいとは言えないわね、ちゃんと栄養のある食事とっている?外の世界に住んでいたみたいだけど碌な食事とっていなかったんじゃない?」
ブロさん「ううんまぁ・・あまりね」
自分で思い返してみた、仕事のある日は水で済ませることもあり最悪の場合は何も食べないことすらあった。休みの日ですら午後に起きちょっとしたパンを食べるだけで食事を終える日々だった。改めて考えると酷い食生活だった。幻想郷に来てやっとマシなものを食べたレベルだ
ブロさん「霊夢が最初に出した食事・・変な草とかだったけどあれの方がまだ食事していたのかなぁ・・悲しいなぁ・・」
アリス「なんか涙目になっていない?そ、そんなにろくでもないものしか食べていなかったのね・・しょうがない!霊夢、ブロさん、今からうちきてお昼食べていきなさいよ。霊夢も最近碌なもの食べれていないでしょ?ご馳走してあげるわ」
霊夢「本当!やったわ~!食事が一日分浮いたわ!行きましょう行きましょう!」
アリス「ええ、ブロさんもまずは栄養作りから、それから強くなればいいのよ。男なんだからちゃんと栄養をとれば自然と大きくなって強くなれるわ」
ブロさん「今からでも強くか・・よし!ちゃんと栄養作りして強くなります!」
二人はアリスの家にお邪魔することにした。アリスの家は魔法の森といった特殊な森を抜ける必要があった。空を飛べないブロさんに森を抜けるのはきつく時間がかかってはしまったがなんとか森を抜けアリスの家についた
ブロさん「はぇ~・・すっごい大きい・・」
アリス「さて、栄養を付けるとしたら・・やっぱり肉と野菜よね。霊夢も同じ奴でいいでしょ?」
霊夢「ええ、同じ奴でいいわ。」
ブロさん「あっ!俺手伝うよ!タダでご馳走してもらうなんて悪いから」
アリス「あら、自分から率先して手伝ってくれるのは嬉しいわね。そしたらお米炊いてくれる?うちは電気コンロだから簡単よ」
ブロさん「かしこまり!・・神社は釜戸なのにここは電気コンロなのか・・」
アリスのキッチンは神社のキッチンとは比べ物にならなかった、オール電化で食器洗いが装備されており電子レンジも一体化していた、さらに冷蔵庫も神社のより遥かにでかかった。
ブロさん「場所によって技術の進歩がでかすぎるっぴ!」
アリス「霊夢のうちはまだ里の技術を活用しているからね、釜戸使っているのは未だにあの里と霊夢のうちぐらいヨ。他は皆オール電化っていうのも珍しくないわ」
ブロさん「へぇ~、なんでそんな技術の差があるの?里とアリスの家もそんな離れていないし同じ文化や技術があると思うけど」
アリス「里の人間が妖怪に対して当たりが強いからかなぁ・・このキッチンを作ったのは河童なの、河童の技術は最近になって凄い勢いで発達してきたわ」
ブロさん「あ~分かる、山にロープウェイとかもできていたしね。これだけの技術があるなら里にも復旧するべきだと思うけどなぁ~」
アリス「それが出来ないのが今の里なんでしょうね、村長かなんかが大の妖怪嫌いで私たちのような人間に近いベースの妖怪以外は立ち入り禁止だし・・このままじゃあの里はどんどん置いていかれちゃう気がするなぁ・・」
霊夢「アリス~!まだ~!腹減ったわ~!」
アリス「まあ・・時間の問題かな、さっ、霊夢がうるさいから早く炊いて持って行ってあげましょ!」
ブロさん「かしこまり!」